小学校中学年

学習障害の読みの苦手・疲労感を軽減できた体験談【子供の読む環境を徹底改善してみた】

小学校中学年

私は2児の母で、小学4年生の長男のレイは自閉症スペクトラム・ADHD・学習障害を持っています。

学習障害の検査を複数受けた結果、レイには学習が困難になる原因がたくさんあることがわかりました。

その一つに、「文章の読み取りが上手くできない」という読むことへの困難があります。

今回は、その読む困難を改善することができた1つの体験談を紹介します。

私の場合、改善できた大きなポイントは「発達障害特有の視力の特性を理解して、特性にあった対策法を講じること」でした。

読む能力というよりも、視る能力に注目したのです。

視覚認知検査の結果からわかる読みやすい文字

学習障害の1つである読む困難の改善の最初のきっかけになったのは、レイが受けた視覚認知検査という検査でした。

この検査の結果、レイに対しては下記の3点を工夫することで、読む速度と精度が共に高くなるということでした。

  1. フォントサイズは18pt (大きめの文字が読みやすい)
  2. 白地に黒い文字よりも、「黒地に白い文字」
  3. 縦書きよりも「横書き」

これ以外にも、文字のフォントによって文字の読みにくさが変わることもわかりました。

日常でよく使われる明朝体やゴシック体、教科書体はダメで、UDデジタル教科書体(ユニバーサルデザインフォント)を使用するのオススメとのアドバイスをいただきました。

UDデジタル教科書体は、線の太さが極端でなかったり、実際に手書きする時の画数や形と変わらなかったり、など障害のある子供でも文章が読みやすくなるような工夫が随所になされているのだそうです。

UDデジタル教科書体(出典:モリサワ

学習障害に見られる読む困難は、読む能力の問題だけではなく、視る力(視力)という根本的なところに原因があったのですね。

さらに、文字の色でも文章の読みにくさが変わることもわかりました。

12色のカラーサンプルを試した結果、例の場合は、やまぶき色のフィルターをかけると文字が読みやすくなることが判明。そこで、カラーサングラスのような遮光しゃこうメガネというものを処方してもらいました。

ここまでの話をまとめると、視覚認知検査の結果、レイは以下のような取り組みをすると、読む困難が改善されるだろうということがわかりました。

視覚認知検査で分かった5つの改善の方法
  • 文字のフォントサイズは大きめで
  • 文章は黒い背景に白い文字
  • 文章は横書きで
  • 文字フォントは、UDデジタル教科書体という特殊なフォントを使う
  • 文章を読むときは、やまぶき色の遮光メガネを使用する

読む困難が軽減しても目への負担は改善されず・・・

遮光メガネを使うようになって数ヶ月。

レイも「読むのが楽になった」と喜ぶようになり、意欲的に学習に取り組んでいましたが、1つ別な問題が浮上してしまいました。

ある日、レイが

「どうしても長時間読み書きを続けると、目や頭がパンパンに痛くなる。だから目の力を抜くのだけれど、そうすると文字が二重に見えてくる。疲れ果てた時には、文字だけでなく人の目や止まっている車のヘッドライトなども、二重に見えることがある」

と切々と訴えてきました。

文字を見るときのまぶしさやチラツキではなく、まさか物まで見にくいとは驚きました。インターネットで調べて「斜位(隠れ斜視)」というものではないかと疑い、その検査をお願いしました。

その結果、やはり斜位があることがわかりました。

斜位って何?

『斜位』は、モノを見るときに視線はズレませんが斜位の人の目の位置は、斜視とおなじく筋肉のバランスがくずれているため、モノを見ているときに正常な目の人と比べ、強い緊張状態があります。それにより多くの方が眼精疲労や原因不明の頭痛・肩コリに悩まされています。

モノを見るときに、片方の目がちがう方向をみてしまう『斜視』と違って、両目の視線が一致するため外見ではわかりにくいので、隠れ斜視と呼ばれることもあります。

レイの目の位置は、わずかに外側へズレていたため、読み書きに必要な寄り目(輻輳)をするためには、人一倍筋力が必要だったのです。だから力を抜くと二重に見えたのですね。

眼位のズレのために学習困難を抱えている子は結構いるそうなのですが、学習障害の原因が目にあるなんてなかなか気付くことができませんし、斜位(隠れ斜視)の場合は、眼科で診断を見逃してしまうこともあるそうです。

実際、我が家は最初「斜位」なんて言葉すら知らなかったし、レイが上手に症状を説明をしてくれなかったら、きっと誰も気付くことはありませんでした。

おそらく、学習障害の原因が目にあることを知らないまま悩んでいる家庭は多いのだろうと思います。

私は運よく気付くことができましたが、子供の学習障害(読むの障害)が改善されず、悩んでいる方は、ぜひ読む能力ではなく、子供の視る力に問題はないか?考えてみると改善のヒントがえられるかもしれません。

この検査を受けて、「プリズムメガネ」という眼鏡を、を処方し直してくれました。光の屈折具合を調整するメガネで、斜視・斜位の眼精疲労の軽減によく使われるメガネらしいです。

プリズムメガネの効果はすぐに現れ、無理に人並み以上に寄り目をし続ける必要がなくなりました。

プリズムメガネは、遮光レンズ以上に効果があり、遮光しなくともプリズムメガネのみで十分にレイの視る力は改善されました。

検査開始から一年以上かかり、やっとレイに合ったメガネを見つけることができました。

デイジー教科書で読む環境を改善!

メガネの次に用意したのはタブレット(iPad)にインストールしているデイジー教科書という教科書です。

デイジー教科書とは?

教科書の内容をデジタル化して、パソコンなどで文字の拡大・色強調、音声再生などを同時に行える教材。読み書きが苦手な子どもが文字を認識することで自信がつき、学習意欲の向上につながると言われている。

このデイジー教科書を、視覚認知検査の結果を踏まえて、レイの読みやすい仕様にカスタマイズしました。

  • 文字は大きめ
  • 背景は黒で、文字色は白
  • ハイライトの色はやまぶき色・・・ など

また、紙の文字を読む場合にも、リーディングルーラーと呼ばれる定規状のカラーフィルターも使うことにしました。

リーディングルーラーは数百円で手に入り、読む辛さも軽減できるのでとても重宝しています。レイの場合は、やまぶき色のフィルターのものを買いました。

読む困難を軽減できて良かったこと

学習障害を疑ってから一年以上検査をいくつも受け、結構大変でした。

けれども、レイのこれからの長い人生を思うと、早く知ることができて本当に良かったなと思います。

親としては、本人の辛さを想像できるようになったので、以前のように「文章を読めないのはレイが怠けているだけなのではないか?」と思うことはなくなりました。

レイ本人も、自分の努力が足りないのではなくて、視る力に原因があることを知って、「自分は怠けていたわけじゃないと分かって良かった」と言っています。

さらに、訓練や様々な工夫で文章を読めるようになった体験や、周囲から自分の辛さを理解してもらえるようになったことは、レイにとって大きな安心感に繋がったようです。

実際に文字の読みやすさは、改善前と改善後では雲泥の差だとレイは言っていますし、親から見ても読み間違いは明らかに減りました。

こうやって成果が見えてくると自信にもつながります。

学習障害は決して努力が足りないわけではない

私は今回の経験を通じて、もっと多くの人に学習障害の本質を知ってもらいたいと感じました。

学習障害による「読み・書き・計算」の苦手は、「努力が足りない」という単純な理由のみで解決して良い問題ではありません。

学習障害の子供の中には、努力をするための学びのスタートラインにすら立てないままの子もたくさんいるということを、もっと大人が気づいてあげられる社会になるといいな、と願っています。

〜〜この記事を書いた人〜〜
teru.ko

学習障害をこじらせて不登校の長男とホームスクーリングをしています。今のところ困り感のない次男もおります。ライターとして、まだまだ知られていない学習障害や不登校などの記事を発信して参りたいと思います。

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