私は2児の母で、小学4年生の長男のレイは自閉症スペクトラム・ADHD・学習障害を持っています。
今回は、また学習困難(読み書き障害)の原因の1つになっている「音韻意識の弱さ」を克服して、学習しやすくなった体験談をお話ししたいと思います。
別の記事で、眼球運動を鍛えるビジョントレーニングで学習困難が改善した経験談も紹介しています。
URL学習障害の読み飛ばし・間違いが改善した体験談【見る力を鍛えるビジョントレーニングを実践してみた】
学習障害(読み書き障害)の子特有の音韻意識の弱さ
言語聴覚士による検査の中で、レイには読み書き障害の子特有の「音韻意識」の弱さが見られることがわかりました。
レイは、「きゃ、きゅ、きょ」などの拗音、「おと『う』さん」のような伸ばす長音など、小学1年生で習う特殊音節がなかなか身につかなかったのですが、この原因こそが「音韻意識」が弱いためだったのです。
検査後の言語聴覚士の先生からは、
「音韻意識というのは、音の最小単位の構成する要素を感じる力です。文字と音が一致している50音のひらがなカタカナは、比較的わかりやすいのだけれど、『きゃ』という音の中に、『き』と『ゃ』が入っている、というような「感覚」が弱い。また、同じ『wa』という発音を、表記上では『わ』と『は』とで使い分けることも、音と文字が一致していないので、感覚的にどうしてもピンと来ない。どれも読み書きの学習障害があるお子さんに特有の症状です。」
というお話しをいただきました。
これらの言葉の発音は、小学1年生でマスターする範囲ですが、先生からは「読み書き障害の子にとっては、どれもとても難しいことだから、ゆっくりと焦らずに、自己肯定感を下げずに取り組むことが大切ですよ。」と言われました。
デイジー教科書のすすめ
言語聴覚士の先生からアドバイスを受けた後、毎日出される音読の宿題のことを考え直すことにしました。
音読が上手くできないため、私もレイもとても辛く、宿題に意味を見出せなくなっていたのです。そこで、言語聴覚士の先生に、「音読の宿題に意味があるのか?」と率直なところを相談してみました。
すると先生からの答えは、
「読みながら内容がわかる子ならば意味があるが、レイくんの場合は、読み上げてもらう文章を何度も聴いて、最後に読む練習をする方が、本当の意味で『学び』になるのかもしれないね」
「誰かに読んでもらうと、読む側の負担にもなるし、本人も気を使うから、デイジー教科書のようなデジタル教科書の読み上げ機能を自分で使えるようなった方が良いですね」
ということでした。
デイジー教科書とは?
教科書の内容をデジタル化して、パソコンなどで文字の拡大・色強調、音声再生などを同時に行える教材。読み書きが苦手な子どもが文字を認識することで自信がつき、学習意欲の向上につながると言われている。
とても悩んでいたことだったのに、先生からスラスラとアドバイスが出てきて、「え、それで良いの?!」と少し驚きましたが、この時、初めてレイに合った学びの方法を知ることができました。
一般的な学習方法とは違う、レイに合った学習方法を見つける必要があったのですね・・・。
大事なのは「読み書き」と「学ぶこと」を切り離して考えること
さらに先生は言います。
知的な遅れのない読み書き障害の子にとって大事なのは、「読み書き」と「学び」を切り離すこと。
一番怖いことは、「正しく読むことや書くこと」の習得のみに目がいってしまい、本来伸ばせるはずの「考える」「知る」という本来の学びの部分が置き去りになることだ。
と教えてくれました。
これらの考え方は本当に私にとって衝撃的でした。私は、学校で学ぶ学習とは「読み書き計算」を身に付けることだと漠然と思い込んでいたからです。
言われてみれば、海外の文化や教育に触れていた頃に、海外では日本よりも「自分の考えを述べる」ことが重要視されるのを感じていました。
その経験があって、「本来の意味で学ぶ」ということが何となくピンと来ました。
でも日本の「読み書き計算を身につける」という教育観が根強いことを思うと、この先の、学校や社会との交渉が大変なことになることの予想がつき、これは大変なことになるな、と思いました。
学習方法を変えてみた
先生からの助言を受けて、デイジー教科書の活用や「読み書き」とそれ以外の学習の切り離しを実践してみました。
レイは1年生の学習が全く定着しなかったため、2年生からは国語と算数を支援学級で見てもらっていました。その支援学級で、すぐにレイに合った内容と進度の学習をしてもらえることになったのです。
支援学級では年間学習指導要領に沿って授業を進めながら、特殊音節などの指導を個別に指導してくれました。
算数の時間では、文章問題は先生に読み上げてもらい、レイには考えることに専念させてもらいました。これは、「読み書き」と「その他の学習」の切り離しの一例です。
そして、前から問題になっていた音読の宿題は、学校とも相談してデイジー教科書の読み上げを聴くことに替えてもらいました。
デイジー教科書の効果はすぐに現れました。一度正しい音読を聴くだけで、二度目からは同じように丁寧に教科書を読み進めることができるようになったのです。これにはとても驚きました。
相変わらず初見の文章を読むことが難しいのは変わりませんが、それでも文章を読めるようになったことで、「正しい日本語を身につける」という本来の学びのステップに入ることができるようになりました。
以前までの一般的な学習方法は、レイがとても辛そうだったので、この新しい試みは大正解でした。
学習障害の子にとって、「読み書き」と「それ以外の学習」を分けて考えることは本当に大切なことだと思います。この2つを合わせてしまうと、読み書きでつまづいて、その先までなかなか到達できません。
もし子供の学習に問題を感じる時は、「読み書き」の学習の時はそれに専念して、それ以外の考える学習の際は、「読み書き」の部分をサポートすることで、考えることに専念させる。そんな風にしてみると、何か進展があるかもしれません。
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